一度は諦めた恋なのに、エリート警視とお見合いで再会!?~最愛妻になるなんて想定外です~
彩乃はキーボードに走らせていた手を止めて、ぐっと伸びをした。
担当の弁護士から指示された、英文レターを作り終えたところだ。
英語の勉強を続けているものの、やはり苦手意識がぬぐえない。
それでもなんとか形になってよかった。
(あとは明日の午前中にトランスレーターにチェックをしてもらって......今日のタスクはもう終わりかな)
時刻は午後七時十分。予想よりも早く終わったけれど、水分も取らずに集中していたせいで喉がカラカラだ。
お茶を飲んでから帰ろうと、職員用休憩スペースに向かう。
執務フロアを出て左に進むと休憩スペースやトイレなどがある。右に進むと受付と相談室などがあるのだが、ちらりと右側に視線を向けたとき、受付終了時間だというのに人影を見付けた。
受託中のクライアントから受付終了後の面談を希望され受けるときもあるが、その場合誰かが迎えに出るから、約束をしている訳でさないだろう。
(受付時間を知らないで来た人かな?)
彩乃は休憩スペースに向かうのを止めて、用件を聞くために受付に向かった。
受付カウンターの前に居たのは、グレーのスーツ姿の男性だった。
人が近付く気配に気づいたのか、男性が彩乃に顔を向けた。
どこかで見た覚えがあるような気がする。
目が合った瞬間、彩乃は驚き目を見開いた。