再会したエリート警視とお見合い最愛婚

「佐藤さん?」

 そこに居たのは、蒼士の上司。見合いのときにも同席していた佐藤だった。

(どうして佐藤さんが?)

 彩乃は小走りで彼に駆け寄った。

「ああ、彩乃さん、よかった」

 もしかしたら蒼士に何か有ったのかもしれない。慌てる彩乃に、佐藤は礼儀正しく頭を下げる。

「ご無沙汰しております」

 彩乃も彼の前で立ち止まり礼をしたが、すぐに顔を上げて問いかける。

「あの、蒼士さんに何か有ったんでしょうか?」

 蒼士の上司が彩乃に会いに来るというのは、ただ事ではない。

「彩乃さんを迎えに来ました。本来なら北条君が来るべきだが、今彼は来られる状況じゃないので」

「えっ?......もしかして任務中に怪我でも?」

 連絡が入っていただろうか。すぐに着信履歴を確認したいがあいにくスマートフォンは、自席に置いてきてしまった。

「無事ですが、北条君は今特殊な任務で外部との連絡が取れない状況なんです。だから彩乃さんと面識がある私が代わりに迎えに来たんですよ」

「そうなんですね......でもなぜ私を迎えに?」

 蒼士に問題がないのなら、彩乃が呼ばれる理由はないと思う。

「詳細は申し上げられませんが、北条君の任務の関係で家族も保護する必要があると判断しました。あまり時間がありません。安全な場所に移動しますので、申し訳ありませんがすぐに用意をして同行願えませんか?」

「わ、分かりました......」

 彩乃は動揺しながらも頷いた。

 事情は不明だが、自分の存在が蒼士の弱点になる状況なのかもしれない。それならば足手まといにならないように、指示に従わなくては。

「もう帰れますので直ぐに荷物を取ってきます!」

 踵を返して執務フロアに向かう。そのときふと疑問が頭をかすめた。

(このこと、お父さんは知っているのかな?)

 考え込みそうになったとき、佐藤の急かす声がした。

「彩乃さん、申し訳ないんですがなるべく急いで貰ってもいいですか? 先ほども言いましたが時間がないもので」

「はい、すぐに戻ってきます!」

 彩乃はバッグとコートを持ってくるために、大急ぎで自席に向かう。
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