一度は諦めた恋なのに、エリート警視とお見合いで再会!?~最愛妻になるなんて想定外です~
「滝川さん、ご飯食べて帰ろうって話してたんだけど、一緒に行かない?」
途中で、先輩秘書の女性に声をかけられた。
「あ......すみません、今日は急いでいて、また次の機会にご一緒させてください」
「そうなんだ、残念だけど仕方ないわね」
「すみません、迎えが来ているので失礼します」
先輩に早口で告げるとコートを羽織りバッグを片手に、五分とかからず先ほどの受付に戻った。
「お待たせしました」
「では行きましょうか」
「はい。ご面倒をかけますがよろしくお願いします」
「かまいませんよ。さ、乗ってください」
佐藤に促されてエレベーターに乗る。
「一階じゃなくて地下をお願いします」
彩乃が一階のボタンを押そうとするのを、佐藤が止めた。
「地下は駐車場しかありませんけど......あ、車でいらっしゃってますよね」
オフィスビルの地下には、ゲスト用の広い駐車スペースがある。
一般的な営業時間を過ぎているからか、車はまばらだった。
佐藤が黒いセダンの前で立ち止まり、助手席のドアを開いた。
「どうぞ、乗ってください」
「はい」
彩乃は言われるがまま、助手席に乗り込んだ。
(この車は覆面パトカーなのかな?)
パトカーに乗った経験がないから分からないが、一見普通の車に感じる。
彩乃がシートベルトをすると、すぐに車が発進した。
なだらかなスロープを上り地上に出る。時刻は七時三十分。辺りはすっかり暗くなっている。
「彩乃さん、お疲れのようですね。少し時間がかかるので寝ていてもいいですよ」
「お気遣いありがとうございます。ですが大丈夫です」
彩乃は笑顔で返事をした。
佐藤が言うように疲れてはいるが、夫の上司に迎えに来てもらっているのに寝るなんて失礼なことができるわけがない。
しっかり目を開けて前方を見つめる。
とくに違和感はない順調なスタートだった。
けれど、それから十五分が過ぎた頃に、彩乃は違和感を抱きはじめていた。
(そう言えば移動に時間がかかるって言ってたけど、どこに向かってるんだろう)
保護をすると聞き、てっきり警視庁かまたは関連施設に向かうのだと思っていた。
または父がいる自宅かと。けれど今向かっている方向はそのどちらでもない。
道路混雑か何かで、彩乃が知らないルートを使っているのだろうか。
彩乃は運転中の佐藤を、ちらりと横目で見遣る。
途中で、先輩秘書の女性に声をかけられた。
「あ......すみません、今日は急いでいて、また次の機会にご一緒させてください」
「そうなんだ、残念だけど仕方ないわね」
「すみません、迎えが来ているので失礼します」
先輩に早口で告げるとコートを羽織りバッグを片手に、五分とかからず先ほどの受付に戻った。
「お待たせしました」
「では行きましょうか」
「はい。ご面倒をかけますがよろしくお願いします」
「かまいませんよ。さ、乗ってください」
佐藤に促されてエレベーターに乗る。
「一階じゃなくて地下をお願いします」
彩乃が一階のボタンを押そうとするのを、佐藤が止めた。
「地下は駐車場しかありませんけど......あ、車でいらっしゃってますよね」
オフィスビルの地下には、ゲスト用の広い駐車スペースがある。
一般的な営業時間を過ぎているからか、車はまばらだった。
佐藤が黒いセダンの前で立ち止まり、助手席のドアを開いた。
「どうぞ、乗ってください」
「はい」
彩乃は言われるがまま、助手席に乗り込んだ。
(この車は覆面パトカーなのかな?)
パトカーに乗った経験がないから分からないが、一見普通の車に感じる。
彩乃がシートベルトをすると、すぐに車が発進した。
なだらかなスロープを上り地上に出る。時刻は七時三十分。辺りはすっかり暗くなっている。
「彩乃さん、お疲れのようですね。少し時間がかかるので寝ていてもいいですよ」
「お気遣いありがとうございます。ですが大丈夫です」
彩乃は笑顔で返事をした。
佐藤が言うように疲れてはいるが、夫の上司に迎えに来てもらっているのに寝るなんて失礼なことができるわけがない。
しっかり目を開けて前方を見つめる。
とくに違和感はない順調なスタートだった。
けれど、それから十五分が過ぎた頃に、彩乃は違和感を抱きはじめていた。
(そう言えば移動に時間がかかるって言ってたけど、どこに向かってるんだろう)
保護をすると聞き、てっきり警視庁かまたは関連施設に向かうのだと思っていた。
または父がいる自宅かと。けれど今向かっている方向はそのどちらでもない。
道路混雑か何かで、彩乃が知らないルートを使っているのだろうか。
彩乃は運転中の佐藤を、ちらりと横目で見遣る。