再会したエリート警視とお見合い最愛婚
 浮かんだ考えに蒼士は愕然とした。

(佐藤課長? まさか......だが彩乃は彼の顔を見知っているし、俺の上官だと知っている。近づいても疑わないはずだ)

 それどころか、丁寧に接するだろう。

 行方不明の佐藤。そして不自然な態度の彩乃。

 今、彩乃の隣に佐藤がいるかもしれない。蒼士は焦燥感にかられ彩乃に居場所を聞き出そうとしたが、ぎりぎりで口を閉ざし留まった。

 この会話を聞いているかもしれない佐藤に、蒼士が気付いたと知られてはいけない。

(なにか、手がかりはないのか?)

「そんなに怒るならヒントだけ、黒猫のドアベルの近くなの」

 その発言にはっとして、キーボードに指を走らせる。

 彩乃は今、自分の居場所を知らせているのだと気がついたのだ。

 以前、捜査の為に千葉方面に向かう途中に見かけたカフェ。彩乃が好きそうだと思い、彼女に聞かせたことがある。

 きっと今彼女はカフェの近くを移動している。

 最短の移動ルートを割り出すように指示を出す。

「......それじゃあもう切るね。今日はまだ帰れないから!」

 彩乃が早口に言い、電話を切った。

 蒼士は椅子を鳴らして立ち上がり、その場を駆けだした。

(彩乃を連れているのは佐藤課長だ! 彼女は彼が裏切り者だと気付いたから、あんな言い方をしたに違いない)

 フロアから出て駐車場に向かう。車に乗り込み発進すると新藤にハンズフリーで電話をした。

『はい』

「佐藤が見つかった。千葉方面に移動している。場所を送るからすぐに来てくれ。俺は先に向かう」

『急行します!』

 蒼士は新藤の端末にデータを送ると、スピードを上げて彩乃を追った。


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