屋上にて、君へ
湯野幹の登場と共に、全員一斉に起立をした。



まずは出席確認。そして、湯野幹の消毒タイムが始まるのだ。

みんな両手を前に出して、待ち構えている。まるで自衛隊かキョンシーか何かの朝礼だ。

消毒スプレー噴射。

そして爪チェック。

風邪を引いている生徒には立体マスク強制着用だ。




唯一のメリットと言えば、これだけで授業が15分潰れるくらい。毎回毎回これをやらされると、いい加減しんどくなってくる。


「Oh!桜井さーん。あなたには特別に協力な消毒スプレーを使いマース。私の洗練されたこのボディーに変な菌が付いては困りますでーす」


「それじゃあこちらのおボディーにもお消毒を」

梨佳が今回はめちゃくちゃリアルなカエルのおもちゃを湯野幹に突き出した。

湯野幹は顔を真っ赤にし、険しい顔で怒りだした。毎回この時間帯になると、二人のバトルが始まる。

いつもならこんなやり取りも素直に笑えるのに、今日はダメだ……。まだ昨日の公園での出来事が気になる。




あたしは窓の外をぼんやりと見つめた。ライトグレーの雲が、気だるそうに泳いでいる。校庭では男子がサッカーをしていた。

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