屋上にて、君へ
そう、あれは桜舞う中庭。
あの日、あたしの中で何かが弾けるように――……
「つうかただ単に千夏の顔面にフリスビーが直撃して、近くにいた王子がポケットティッシュを差し出しただけじゃない」
「梨佳ぁぁーヒドい。あたしと王子のプロローグをそんな乱雑に扱わないでよぅ」
「だってそうじゃない。ねー、シオたーん」
シオたんは遠慮がちな笑顔を浮かべて、「確かに」と頷いた。
「シオたんまでー
「ああああああー!!」
梨佳が突然声を張り上げ、中庭の中心を指差した。
「なっ、なにどしたの梨佳」
「あいつ……やっと見つけたわ」
梨佳はそう言うと、血相を変えて、中庭へ走った。
その先には見慣れない男子生徒。
「ちょっ、ちょっと梨佳ー? 待ってよー」
あたしとシオたんは頼りないステップで、梨佳の後を追った。