屋上にて、君へ
「これ、あんたのだったのか?」
「そうよ! だから早く返して!」
梨佳がボールに触れようとしても、ノッポはヒョヒョイと軽くかわす。
ボールに見えない糸が付いてるみたいに、それは操り人形のごとく従順にノッポの手中から離れない。
「このボールいいね。もすこし貸してよ」
そう言うと今度は、クルクルと指の上で回してる。ド素人のあたしからしてみたら、この人、曲芸師以外の何者でもない。
あのノッポが持ってるあれって……梨佳のだったんだ。
所々ハゲてるし、うす汚れてるし、みた感じそんなすごいボールくんには見えないんだけどなぁ。
でもまたなんであのノッポ……
「ねえねえシオたん」
あたしはすぐ隣にいるシオたんに、小声でたずねる。
「あのボールって、そんなに大切なボールなの?」
シオたんは無言でこくんと頷いた。そして明らかその横顔は、いつものシオたんと違ってて
「しっシオた――……」
あたしがシオたんの肩を叩こうと手を振った時には、もうそこにシオたんの姿はなくて、
次に見えたのは、ノッポから梨佳のボールをはたき落とす、シオたんの華麗なジャンプ姿だった。
[ストーリ2]
私達オンナノコ・完