極上CEOの執愛に今にも陥落しそうです~私、振られたはずですよね?
だけど香奈にとって、その存在はとても大きい。苦い終わり方をしたとはいえ、初めて恋をした思い出の場所でもあるせいだろう。
「子どもの頃から大好きだった場所で働けるようになってよかったな」
就職が決まったときには、すでに顔見知りになっていた館長や職員たちも香奈と一緒に喜んでくれた。初めて出勤したときなど、『あんなに小さかった香奈ちゃんと、ここで一緒に働く日がくるなんて感慨深いねぇ』なんて、親目線で言われたものだ。
「海里さん、ひとつ聞いてもいいですか?」
「ああ」
「どうして私とお見合いしようと思ったんですか?」
それは縁談が持ち上がってから、ずっと心に引っ掛かっていることだった。
これまでのふたりの関係性からは、絶対と言っていいほど考えられない展開だから。この九年間は会っていなかったし、つい先日ちょっと会っただけ。それがどういう経緯でこうなるのか、香奈にはまったくわからない。
海里は香奈に真っすぐ向かい合い、口を開いた。
「香奈と結婚したいと思ったから」