極上CEOの執愛に今にも陥落しそうです～私、振られたはずですよね？

　好きと言われたわけではない。しかし真剣な目をしてストレートに言われ、返す言葉に困る。

　（それはどういう意味？　好意があるわけじゃないのに〝結婚したい〟って……）

　海里の真意が全然掴めず、余計に混乱した。


　「……柚葉さんは？」
　「柚葉？　彼女がどうした？」


　海里が不思議そうに眉根を寄せる。

　（なにって、婚約してるんじゃなかったの？　結婚するって……）

　香奈は、パーティーで招待客がそう言っていたのをたしかに耳にしている。
　疑問に思うのに口に出せないのは、柚葉との関係を直接彼の口から聞くのが怖いからなのかもしれない。


　「その……振ったのにどうしてですか？」
　「振った？」


　海里はさらに怪訝そうな表情をした。なんのことかわからない様子だ。

　（私を振ったことも忘れちゃったの？　……そのくらい私に興味がなかったってこと？）