極上CEOの執愛に今にも陥落しそうです~私、振られたはずですよね?
一瞬でも探してもらえるかもしれないと思った自分が情けなかった。こんな人に手伝ってもらいたくはない。
ところが顔を背けようとしたそのとき、目を点にして唖然とした男性の顔が視界の端に入り込んだ。反論されるとは思ってもいなかった表情だ。
勢いで反撃したものの、香奈はその顔を見て我に返る。
「……すみません、言葉が過ぎました」
なにもそこまで怒らなくてもよかった気がしてきた。
「高価なものじゃありませんが、大切なものなのでつい……」
相手がさらに攻撃を仕掛けてこなかったため、苛立ちは急速にしぼみ、冷静さを取り戻していく。訳を知らない相手に、そこまで熱くなる必要もなかったと反省し、香奈は頭を下げた。
それにこんなところで言い争いをしている場合ではない。一刻も早く探さないと見失ってしまう。
「あの、それじゃ――」
「いや、俺こそ悪かった」
〝失礼します〟と言いかけたが、男性が遮る。