極上CEOの執愛に今にも陥落しそうです~私、振られたはずですよね?
「そう思ってるのは、おねえちゃんだけだと思うけど」
「まさか」
深優に言われて思い出した。
(そういえばこの前、いきなり自分と結婚すればいい、みたいなことは言ってたけど……。でもあれは冗談。たぶん真司くんは、失恋した相手と結婚するなんてどうかしてると思って言っただけ。うん、そうよ)
凪子と同じく深優の勘違いだ。
しかし深優は香奈の意見とは反対らしい。
「真司くん、報われないなぁ」
眉尻を下げ、残念そうに言う。責められているようでつらい。
「……あんまりいじめないで」
「ごめんごめん。まぁ真司くんのことは置いておいて、深く考えなくていいと思うな、私は。とにかく自分に正直になるのが一番だよ」
深優は人差し指を立て、にっこり笑った。
(自分に正直に、か。……私の気持ちはどこにあるのかな)
今はドラマティックな再会に酔い、ただ単に昔の思い出に浸っているだけなのではないか。自分の心なのにあやふや。九年前で止まっていた時間がいきなり動きだし、めまぐるしく状況が変わるため置いてきぼりにされている。
「さてと、冷めちゃうから食べよ」
深優に言われ、香奈は気を取りなおしてピラフを頬張った。