極上CEOの執愛に今にも陥落しそうです~私、振られたはずですよね?

 盛況ぶりに安堵しながら、ふとエントランスのほうを見た香奈は、自動ドアを抜けてきた女性に目を奪われた。


 「……柚葉さん?」


 思わず声が出る。海里の婚約者だったはずの幼馴染だ。
 清楚な彼女にぴったりの真っ白なワンピースが、膝下で軽やかに揺れる。長い黒髪が大きな窓から差し込む光で艶めいた。


 「香奈ちゃん、お久しぶり」
 「……お久しぶりです」


 ふわりと微笑んだ彼女にワンテンポ遅れ、ぎこちない笑みで会釈を返す。
 パーティー会場では見かけたが、顔を合わせるのは九年ぶり。改めて面と向かうと、その美しさに同姓でもどぎまぎする。バラのように棘のあるものではなく、ユリのように楚々とした美貌だ。当時も綺麗だったが、年齢を重ねて透明度が増していた。


 「ここで働いていたのね」
 「はい……」
 「懐かしいわ」


 柚葉は周囲を見回し、目を細めた。どの角度から見ても美しい容姿を前に、やはりどうしても疑問に思う。
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