極上CEOの執愛に今にも陥落しそうです~私、振られたはずですよね?

 (どうして柚葉さんと別れて私なのかな)

 自分に敵うところがあるようには思えない。昔は羨ましくて仕方のなかった彼女と立場が逆転し、どう接したらいいのかもわからない。


 「香奈ちゃん、少し話さない?」
 「ごめんなさい。今、仕事中で……」
 「お昼まで待つわ。そこのカフェにいるから」


 柚葉は図書館に併設されたカフェを指差した。
 咄嗟に腕時計で時間をたしかめる。


 「まだ一時間もありますが」
 「大丈夫。私、時間ならいくらでもあるから」


 ふわりと笑い、会釈して香奈に背を向ける。


 「あ、あの」


 呼び止めようとしたが、ゆっくりした足取りで遠ざかる柚葉に立ち止まる気配はなかった。

 (本を借りにきたわけじゃなかったのかな……。話ってなんだろう)

 とはいえ、香奈と柚葉の間の共通の話題といえば海里以外にない。
 イベントに目もくれずに立ち去った彼女の背中を見つめて、緊張を覚えた。
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