極上CEOの執愛に今にも陥落しそうです~私、振られたはずですよね?

 「いえ、そんな」


 夢を叶えた事実に胸を張りたいけれど、今の彼女にそんな真似はできない。謙遜して首を横に振った。


 「私なんて、大学を卒業してから外で働いてないし、花嫁修業的なことしかしていないもの」


 柚葉が笑みを浮かべる。どこか無理して笑っているようにも見えて胸が痛む。
 想い合っているふたりが一緒になれないなんて残酷だ。


 「花嫁修業も大変だと思いますから」


 どちらがすごいという話ではないし、むしろ香奈はそれに背を向けて逃げてきた。


 「そうかな。……あ、そろそろお花のお稽古の時間になるから、私そろそろ行くわね」


 柚葉は腕時計を確認し、バッグと伝票を手に取った。
 せめて自分の分だけは支払おうと財布を取り出したが、柚葉が手で制す。
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