極上CEOの執愛に今にも陥落しそうです~私、振られたはずですよね?
九年越しに海里の連絡先をゲットしたのに、柚葉から聞いた話が邪魔をして素直に喜べない。
「元気がないな。なにかあったのか?」
探るように見つめられてまごつく。柚葉から内緒だと言われたのに目が泳いでしまったが、
「いえ、なにも」
取り澄まして首を横に振る。
「本当に?」
「……本当に」
不必要に瞬きをしながらも、顎をぐっと引いて答えた。これ以上、詮索されませんようにと願って息をひそめる。
海里は一瞬だけ視線を鋭くさせたが、すぐに笑みを浮かべて香奈の肩にトンと触れた。
「わかった。じゃあ行こう」
そのまま歩みを促されたが、足を踏ん張る。
「行こうって? どこへ? 突然そう言われても」
「未来の夫の誘いを断るとはなにごとだ」
「夫って、まだ返事はしてませんけど……!」