極上CEOの執愛に今にも陥落しそうです~私、振られたはずですよね?
柚葉から真相を聞いたのにもかかわらず、〝夫〟というキーワードに簡単に翻弄される。
「たしかにまだ返事をもらってなかったな。それで?」
海里は回答を求め、小首を傾げて香奈の顔を覗き込んだ。
お見合いしたのだから返事をするのはあたり前。でも、香奈はまだ決めかねていた。
なにも言えず、彼を見つめ返す瞳が揺れる。
「まぁ迷って当然か。人生の一大決断だからな。それなら俺は、香奈に結婚したいと思ってもらえるよう全力を尽くすのみだ」
「ちょ、ちょっと待って」
海里は香奈の腕を掴み、半ば強引にコインパーキングに引っ張った。
(どうして私との結婚にそんなに必死になるの? 柚葉さんを早く吹っ切りたいから?)
本音を聞きたいが、柚葉と約束した以上、不用意な質問はできず口を噤む以外にない。
磨き上げられた黒い車体に、ぽつぽつと灯りはじめた外灯が反射する。帰国して即決したという車は、駐車されている中でも群を抜いて存在感がある。
海里は助手席のドアを開け、香奈を乗せた。