極上CEOの執愛に今にも陥落しそうです~私、振られたはずですよね?
香奈のマンションの前で車が止まる。
キスをされたあとから、香奈はほとんど記憶がない。彼との会話はうわの空。なにを話したのかも定かじゃなく、それもまた不安を煽っていた。
運転席から降り立った海里が、助手席に回って香奈を下ろす。
(あのキスの意味は?)
そう尋ねたいのに言葉にならない。
好意のない、ただの気まぐれだと知りたくなかった。
「さっきから急にしゃべらなくなったな」
「そんなことないです」
顔を近づけ覗き込まれたため、半歩後退して首を横に振る。先ほどのキスを思い返して気が気でない。
「……そうか、そうだったよな」
海里は急に焦ったように顔を曇らせた。
なにが〝そう〟なのか、キスどころか言葉の意味もわからないまま海里を見上げる。
「香奈が喜ぶのは、ああいうのじゃない」
「〝ああいうの〟って……?」
キスのことかとドキッとしたが――。