極上CEOの執愛に今にも陥落しそうです~私、振られたはずですよね?
「私、当時もお似合いだなって思ってたんだけど、あれきり見かけなくなったでしょう? どうしたのかなって思ってたの。お付き合いはじめたの?」
「お付き合いというか……結婚――」
「ええっ!? 結婚!?」
昔から書架での物音を取り締まる立場の凪子が、香奈を遮り脳天から大きな声を出した。
自分で自分の声に驚いたのか、目を最大限に開き、口に手をあてる。
「どういうこと?」
「結婚はまだですが、先日お見合いをして」
「ちょっとよくわかんないんだけど……」
なぜ当時ここで一緒に勉強していた海里とお見合いに至ったのか、理解に苦しむのだろう。凪子は眉間に皺を寄せて悩ましい顔をした。
「じつは私もまだよくわかっていないんです」
「本人もわかってないってどういうこと?」
今度はクスクス笑いだす。
海里と会えなくなってから九年なにもなかったのに、再会してからの展開はその間の分までまとめて起こったようなめまぐるしさだ。次から次に起こる出来事についていけていない。
本人がわからないのだから、他人はもっとわからないだろう。