極上CEOの執愛に今にも陥落しそうです~私、振られたはずですよね?
『なにか取り込み中だったか?』
「べ、べつになにも。読書してたくらいです。とにかくどうぞ」
読書なんて嘘っぱち。取り繕って、オートロックを解除する。彼がドアの前でもう一度インターフォンを鳴らすまで、玄関で待機した。
玄関の向こうの足音に耳を澄ませる。ただ彼を部屋に招くだけなのに、鼓動は異様な速度で刻んでいた。
待ち構えていたインターフォンが鳴ったあと、頭の中でゆっくり五までカウントする。まったくもって意味はないが、余裕ぶりたかった。
最後に息を大きく吸い込み、ドアを開ける。
(どうしよう、出迎えるときの言葉を用意していなかったわ……)
最後の最後に準備不足を後悔する。
「こ、こんにちは」
ひとまず当たり障りのない挨拶を口にしたが、合っていたのかどうか。
しかし直後に、そんな悔いなど吹き飛んでしまう。海里は隠し持っていた大きな花束を差し出してきたのだ。モニターには映っていなかったから、見えないようにしていたのだろう。