極上CEOの執愛に今にも陥落しそうです~私、振られたはずですよね?
たしかに失くしたとわかったときに血の気が引いたのは事実。とにもかくにも見つかってよかった。
「ありがとうございます。本当に助かりました」
「よほど大事にしてるものなんだな」
「はい。アルバイトをして初めて自分で買ったものなんです」
「へえ、アルバイト」
男性は感心したように唸った。パーティーの出席者からは想像がつかず、意外に思ったみたいだ。なにしろ社会的に成功を収めている人ばかりが集まっている。その娘なら、なんでも好きなように買い与えられていると思っても仕方がない。
本好きが高じて書店でアルバイトをしている香奈は、初めてのお給料で両親にささやかなプレゼントをし、残ったお金で自分へのご褒美としてイヤリングを買った。これは初めて自分で稼いだお金で買った、大切なイヤリングなのだ。
「偏見でものを言って本当に悪かった。パーティーの雰囲気にうんざりしてつい。いや、それは言い訳だな。本当にすまなかった」
「もういいですから。それにパーティーが憂鬱になってビーチに出てきたのは私も同じです」
香奈は肩をすくめて笑う。非を認めて素直に謝る姿に好感を持ち、パーティーに辟易していた彼に、急に親近感を覚えた。