極上CEOの執愛に今にも陥落しそうです~私、振られたはずですよね?
心に落ちた染み


 香奈に結婚の了承をもらっておよそ十日が経過。海里の姿は、日本からプライベートジェットでおよそ十三時間、ニューヨークのマンハッタンにある『Amusee(アミュゼ)』本社にあった。

 アミュゼの主力はイーコマース事業。ショッピングサイトはアメリカだけに留まらず、日本をはじめとした世界十五カ国で利用されており、アメリカ最大のシェアを誇る。有料会員数は昨年三億人を突破し、成長は破竹の勢いである。

 海里は地上四十五階にあるCEO室の大きな窓辺に立ち、久しぶりにマンハッタンの夜景を眺めていた。銀河の星屑をちりばめたような眩い景色は、美しいだけでなく、とてつもなく大きなエネルギーに満ち溢れる。一歩間違えば、強大な力に飲み込まれてしまいそうな危うさが、海里を虜にしていた。
 おそらく、世界的な金融街への憧れもあるだろう。世界の中心地に立っているという、ある種のステータスだ。
 起業当時、いつかこの場所に本社を構えたいと野望を抱いていたが、海里はわずか五年でそれを叶えた。

 忙しなく叩かれるノックと同時に部屋のドアが開く。海里が振り返るより早く入ってきたのは、アミュゼのCOO――最高執行責任者のミナト・サンダースだった。

 アメリカ人の父と日本人の母を持つ日系アメリカ人の彼は、海里と同い年の三十一歳。海里の手となり足となり動く人物である。
 両親をほどよく中和した甘い顔立ちは、軽くパーマのかかったブラウンヘアがよく似合う。
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