極上CEOの執愛に今にも陥落しそうです~私、振られたはずですよね?

 図書館に戻ってから食べようと袋を提げ、コンビニをあとにする。勉強から離れた解放感か真っすぐ帰るのが惜しくなり、図書館まで遠回り。開封したときにアイスが溶けてドロドロだったのもいい思い出だ。

 そうするうちに、いつしか芽生えていた恋心。たぶん香奈も同じだろうと感じていたが、卒業後の渡米が決定していたため、海里は必要以上に踏み込むのを躊躇った。

 たとえ想いが通じ合ったとしても、日本とアメリカの遠距離恋愛になる。アメリカに渡れば忙しい日々が待っている海里では、寂しい想いをさせるだろう。なにより夢を叶えようとしている香奈の負担になりたくなかった。

 卒論が仕上がり、香奈も見事大学に合格したあと、海里は図書館通いをぴたりと止めた。香奈とはもう会わない覚悟で。

 今なら、どんなことをしても好きな女性を諦めたりしないだろう。しかし当時は子どもと大人の狭間に位置する未熟な時期。確固たる自信がなかったのだ。

 しかしそう決めたものの、香奈への想いは燻り続け、海里を激しく揺さぶっていた。
 気持ちだけでも伝えようか。いや、それはエゴだろう。

 そんな葛藤を繰り返していた海里に、決定的な事実が突きつけられる。ふたり共通の友人である真司から、香奈と付き合うことになったと告げられたのだ。
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