極上CEOの執愛に今にも陥落しそうです~私、振られたはずですよね?
「ちょっと用事があって近くまできたの」
「用事? この近くに柚葉が?」
働いていない彼女がオフィス街に用事とはなにかと、不可解に思って聞き返す。
「うん、ちょっとね。それで、前に海里くんがここのコーヒーがおいしいって言ってたのを思い出して」
「それなのに、それ?」
柚葉がストローでかき混ぜた残り少ないグラスの中身は、アイスコーヒーとは違う。
「あっ、うん、間違えてアイスティーを注文しちゃった。次は必ずコーヒーを飲むわ。それはそうと、出張だったの?」
キャリーバッグを見て、柚葉が話題を変える。
「ニューヨークから帰ったところ」
「それじゃ、海里くんに会えてラッキーだったな。少し時間ある?」
「まぁ多少は」
「ちょっと付き合ってくれるとうれしいな」
少しならと思い、キャリーバッグを隅に置き、彼女の向かいに腰を下ろした。