極上CEOの執愛に今にも陥落しそうです~私、振られたはずですよね?
「おじ様に聞いたんだけど、お見合いしたんですってね」
「耳が早いな」
海里の実家と柚葉の自宅は、目と鼻の先にある。父親が友人同士のため、海里と柚葉は幼い頃はよく互いの家を行き来していた。
広告代理店の社長を父親に持つ柚葉は当時、引っ込み思案だったため友達がなかなかできず、同級生よりも海里や海里の弟である駿(しゅん)と遊ぶほうが多かった。海里の母親も娘のように彼女をかわいがったものだ。
海里がアメリカに渡ってからもちょくちょく顔を見せたようで、たまに母親から【柚葉ちゃんからおいしいクッキーをいただいたの】などというメッセージがよく届いた。
「お相手は香奈ちゃんなんですって?」
「ああ」
「水くさいな。直接話してくれればいいのに」
「悪い。ちゃんと話そうとは思っていたんだ」
柚葉が不満そうに唇を尖らせたのは気づいたが、見ていないふりをして窓の外に視線を投げる。
柚葉から好意を感じるようになったのは、いつからだっただろう。
彼女が中学生になった頃か。明確に打ち明けられたわけではないが、言動や眼差しから薄っすらと感じていた。