極上CEOの執愛に今にも陥落しそうです~私、振られたはずですよね?
「いや、褒め言葉ととるから大丈夫」
男性がにこやかに微笑んだためホッとした。
「キミは大学生?」
「高校生です。三年生の十八歳。……老けてますか?」
「大人っぽいからそう見えただけ」
男性がおどけた目をして言ったため、ふたりで吹き出した。
初めて言葉を交わしたときからは考えられない、友好的な空気に包まれる。
「俺は八雲海里。キミの名前は?」
「音羽香奈です」
「音羽? オトワ飲料の?」
「はい、父が社長を務めてます」
三年前に亡くなった祖父が若い頃に興した会社を、香奈の父が引き継いだ形である。三代目をどうしようかと今から頭を悩ませているらしい。
社長になってまだ三年なのに、もう次の世代の心配?と疑問をぶつけたら、『いいか、香奈。早いうちから育てておかなければ企業のトップには立てないのだよ。だから……』と長話がはじまってしまった。