極上CEOの執愛に今にも陥落しそうです~私、振られたはずですよね?
「忘れるって誰がなにを?」
「あっ、ううん、ごめんなさい。なんでもないの」
「なんでもないって顔じゃないだろ。誤魔化すなら、もっと上手にやってくれ」
目を泳がせながら俯く仕草は、いかにもなにかを知っている様子だ。
顎を引き真正面から見つめると、柚葉はそーっと顔を上げ、探るように見つめ返してきた。
「香奈ちゃんを問い詰めないって約束してくれる?」
「香奈を? ……会ったのか?」
ふたりは顔見知り程度の間柄。海里がお見合いをしたと知り、わざわざ会いに行ったのだろうか。
目を細めて問いかける。
「この前、久しぶりに言の葉ライブラリーに行ったら、そこに香奈ちゃんがいて。あそこで働いていたのね。そのとき少しだけ話して……」
いつもおっとり話す柚葉が、珍しく早口になる。責められたように感じたのかもしれない。
「それで?」
「香奈ちゃんには言わないでくれる?」
「そんな真似はしない。柚葉から聞いたとも言わない」