極上CEOの執愛に今にも陥落しそうです~私、振られたはずですよね?
それを聞き安心したのか、しかし言いにくそうにぽつぽつ話しだす。
「香奈ちゃん、ほかに好きな人がいるみたいなの。昔、真司くんと付き合ってるって海里くんから聞いたことがあったけど、彼のことなのかも。どういう理由で別れたのかはわからないけど、香奈ちゃんのお父様に反対でもされたのかしら」
柚葉の告発を聞き、海里は少なからず動揺した。
(香奈が結婚を躊躇っていたのは、そういうわけだったのか……?)
顎に手を添え思案する。
香奈の父親は、たしかに彼女に最良の結婚相手を探していた。真司はいい男ではあるが、商社勤めというだけでは香奈の父親のお眼鏡にはかなわないだろう。
それが原因で別れるはめになったのではないか。
香奈が海里との結婚を躊躇う理由は、話を早く進めすぎて気持ちを置き去りにしたせいではなかったのかもしれない。彼女の心の中には、海里ではないべつの男――真司がいる。
「海里さん、ごめんなさい。こんな話はするつもりじゃなかったの」
「柚葉が謝る必要はない」
「怒ってない?」