極上CEOの執愛に今にも陥落しそうです~私、振られたはずですよね?
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 香奈は、雨音を聴きながら、近く開催される写真展の準備をしていた。
 グレーの雲が街の色を消し、朝から降る雨が図書館の大きな窓にたくさんの雫をつけている。静かに降る雨でも音がよく聞こえるのは、図書館の静けさのおかげ。晴れた日はもちろん好きだが、より静かでしっとりとした雰囲気の館内も好きである。

 アメリカに出張していた海里から、つい先ほど帰国報告のメールが届いた。

 (今日帰ってくるって事前に教えてくれたら、お休み取って空港まで迎えに行ったのにな)

 プロポーズの返事をしてから、香奈は心が軽くなったような気がしている。自分の気持ちを素直に認めてあげることは大切みたいだ。深優と凪子に感謝しなければならない。

 (海里さんの会社に行ってみようかな。これまでずっと受け身だったけど、自分から行動して振り向いてもらわなきゃね)

 そう積極的に考えられるのも、海里はもちろん深優と凪子のおかげである。

 彼からのメッセージには、空港から会社に直行すると書いてあった。香奈が仕事を終えてから向かっても、おそらくまだ会社にいるだろう。
 東京オフィスが入っているビルの一階に、海里お気に入りのコーヒーショップがあるらしいから、そこで彼が出てくるのを待てばいい。
 驚く彼を想像して笑みが零れた。
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