極上CEOの執愛に今にも陥落しそうです~私、振られたはずですよね?
仕事を終え、香奈は電車を乗り継いでYAGUMOホールディングスの東京オフィスが入居するビルにやってきた。
雨で靴が濡れても平気なのは、久しぶりに海里に会えるからだろう。傘の上を跳ねる雨粒のように、香奈の心も弾んでいた。
エントランスに入ってすぐ、右手にコーヒーショップを見つけた。入口付近の席で待てば、海里の姿をすぐに見つけられるだろう。
「いらっしゃいませ」
店員に声をかけられたそのとき、窓際のテーブルに海里を見つけた。
「海――」
一歩踏み出した足を止める。海里の向かいに柚葉がいたのだ。
ふたりは幼馴染だから、会っていてもおかしくはない。でも海里は、今日アメリカから帰ったばかり。その足で真っ先に会いたいのは――
(やっぱり柚葉さんなの……?)
辛い現実を目の当たりにし、香奈はその場から動けなくなった。