極上CEOの執愛に今にも陥落しそうです~私、振られたはずですよね?
大事にしたい想い
土曜日の図書館は、朝からたくさんの人が集まっていた。
夜をテーマにした写真集や本を特集した企画が、今日から一週間開催される。それにちなんで一般から公募した夜の風景写真が特設会場に掲示され、幻想的な空間を作り上げていた。街や工場群、港の夜景や夜空など、どれも撮影者の渾身の一枚だ。
来場者たちは本を手に取り、写真を眺めてはゆっくり回る。夕方を迎えても人は途切れず、香奈は書架と特設会場を忙しなく行き来しながら、頭の片隅では海里と柚葉のことを考えていた。
コーヒーショップでふたりを見かけてから二日が経過。海里とはまだ顔を合わせていない。
決して避けているわけではなく、海里が仕事で忙しいためである。
(柚葉さんには帰国してすぐに会ったのに、私には顔を見せてもくれないのね)
電話とメッセージのやり取りしかできていないため、弱気な自分が顔を覗かせ、たびたび香奈を迷わせている。
そうしてひとりで悩んでいるのなら、いっそのこと、ふたりが一緒にいるところを見かけたと言ってしまおう。そう考えて電話で口を開きかけたが、わざわざ喧嘩の種を撒くような真似は避けたかった。
どういう経緯があろうと海里との結婚を決意したのだから、破局へ向かうような言動は慎みたい。彼を振り向かせるという決意に変わりはないのだから。