極上CEOの執愛に今にも陥落しそうです~私、振られたはずですよね?

 「せっかくだからじっくり見ていってください」
 「もう見て回ったよ」
 「えっ、いつの間に?」


 海里が来場していたなんて、香奈はまったく気づかなかった。


 「香奈の仕事ぶりもじっくり見た」
 「やだ、なんか恥ずかしい」
 「意外と真面目にやってたな」
 「意外は余計です」


 いたずらっぽく笑う海里に苦情を申し立てる。


 「冗談。思ったとおりだったよ」


 くしゃっと髪を撫でられた。
 髪が乱れるのも気にならない。香奈は久しぶりに会った海里を薄っすらと赤く染まった顔で見上げた。


 「そろそろ仕事も終わりだろう?」
 「はい、あと少しで」


 時刻は五時五十分。あと十分だ。


 「明日は休館日だよな? 明日の夜まで香奈の時間を俺にくれ」


 海里の誘い文句に鼓動が不規則に弾む。

 (つまり、明日の夜まで一緒に過ごそうってことよね?)

 言葉の裏を読んで頬が熱くなった。
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