極上CEOの執愛に今にも陥落しそうです~私、振られたはずですよね?
動揺した結果、かわいげのない言葉が口をついて出てしまった。不服に思うはずがない。
海里は目をわずかに見開いてから細めた。
「そうだったな。悪かった」
「謝らないでください。べつに大丈夫ですから」
(突然だったけど、私はうれしかったんだから)
海里は香奈の頭をポンポンと撫でる。宥めるような優しい手つきの意図がわからない。
(それならいっそ、無理やりにでも唇を奪ってくれていいのに)
「無理するな」
「無理なんてしてません」
むしろそれは海里のほうだろう。自分の心に嘘をついて、愛する人以外と結婚しようとしているのだから。
香奈は、そのやり方につけ込んでいるだけ。
海里は意味深に微笑んだ。どことなく寂しげに見えたのは、柚葉を想ってか。
「そういえば、図書館は変わりないか?」
「え? はい、特に変わりはないですけど……」
いきなり話が変わり、頭が混乱する。
「図書館がどうかしたんですか?」
「いや、なにもなければいいんだ。さて、時間も遅いし、そろそろ風呂に入って寝るか。案内するよ」
海里は大きく伸びをして、香奈をバスルームに連れ立った。