極上CEOの執愛に今にも陥落しそうです~私、振られたはずですよね?
「明日は香港を案内するよ」
「ほんとですか? 楽しみ」
香奈の知らない海里の九年間を垣間見られるのはうれしい。ほんの一部に過ぎなくても、少しずつ埋めていけば、いつかきっと柚葉の存在を越えられると香奈は信じている。それこそが昔、海里が教えてくれた〝私はできる〟の精神である。
今は海里が香奈を妻にしようと考えてくれただけで十分だ。
再び前向きな気持ちを取り戻せたのは、忙しい海里が香港まで連れてきてくれたおかげ。香奈を喜ばせようとしてくれたから。
(私も、海里さんになにかできることはないかな……。少しでもいいところを見せて、好きになってもらう努力をしなきゃ。今すぐできること、なにかあるかな)
あれこれ考えて思いついた。
「海里さん、読み聞かせをしてもいいですか?」
「読み聞かせ?」
驚かせてしまったか、海里は目を丸くした。
「あ、もちろん絵本とか児童書じゃなくて、大人向けの本ですけど」