極上CEOの執愛に今にも陥落しそうです~私、振られたはずですよね?

 そう提案してすぐ、自分でブレーキをかける。


「……子どもっぽいですね、ごめんなさい」


 いくら得意だからとはいえ、さすがに読み聞かせはないだろう。

(なにかほかのことを考えよう。今ここでアピールできそうなものは……)

 顎に手を添え思案するものの、なかなか思いつかない。


「ぜひ聞きたい。香奈が司書を目指したきっかけだろう。聞かせてくれ」
「……覚えていてくれたんですか?」


 今度は香奈が目を丸くする番だった。
 九年前、初めて出会ったときに語った、たわいない話を海里が覚えていたとは。


「もちろん」


 海里のそんなひと言にもうれしくなる。


「じゃあ、聞いてもらおうかな」
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