極上CEOの執愛に今にも陥落しそうです~私、振られたはずですよね?
確認されて頷いた。
「では、いきます」
膝に海里の重みを感じつつ、咳払いをひとつしてはじめた。
朝目覚めたときに見た空の色、公園で日向ぼっこをしている猫との出会い、道端に咲いている花など、ごくありふれた日常の一ページを切り取ったような、優しく語りかける詩の数々を読んでいく。忙しい海里の心が、少しでも安らげるように願って。
香奈自身も疲れを感じたときには、この一冊をぼんやりしながら読むことが多い。読み終わる頃には、なんとなく気持ちがすっきり浄化されたような気分になる。
ふと見ると、海里は目を瞑っていた。
(あれ? 寝ちゃった? つまらなかったかな……)
退屈させてしまったか。寝息をたしかめようとスマートフォンを脇に置いて顔を近づけた途端、海里が瞼を開く。
「寝てるのかと思いました。あまり上手にできなかったかな」