極上CEOの執愛に今にも陥落しそうです~私、振られたはずですよね?
海里は香奈を肘で小突いた。
ちょっとした冗談だ。本気でそうは考えていない。
「俺はやりたいことがべつにあるから会社は引き継がない。悪いな」
「それは残念」
もう一度彼に肘で突かれたが、「冗談です」と笑って返す。
「でも、学生のうちからはっきり将来を見据えてるってすごいですね」
「そう?」
聞き返されて頷いた。親の会社を継げばいいやと安易に考える人がほとんどではないだろうか。成功している会社ならなおさら。
もちろんそれを存続させていくのは容易ではないし、継ぐほうが楽なわけでは決してないけれど。むしろ後継者は大きなプレッシャーを跳ねのける力も必要とされるだろう。
しかしすでにある道を選ばず、我が道を開拓するのには勇気がいる。それを目指している海里を眩しい思いで見た。
「キミもご両親には多大な期待をかけられてるだろう」
「私は逆です。大学を卒業したら料理や花を習って、家にいればいいと言われてて……」