極上CEOの執愛に今にも陥落しそうです~私、振られたはずですよね?

 いつも子どもを相手にしているためそこそこ自信はあったが、大人向けの朗読はもっと勉強したほうがいいかもしれない。


 「いや、よかったよ。それに香奈の声、俺は好きだ。……すごく」


 しっとりとした眼差しに吸い込まれそうになった。
 彼が好きだと言ったのは香奈自身じゃない、声だとわかっていてもたやすく心は乱される。


 「ずっと聞いていたいって思った」


 海里はそのまま上体をわずかに起こし、香奈に唇を重ねた。あっと思う間もない早業だった。


 「……さっきはしないって」
 「そうだったな。無性に香奈とキスがしたくなった。許せ」
 「そんな、べつにいいですから」


 許せなんて言ってほしくない。もっと強引に、どうせなら体ごと奪われたっていいと思っていた。たとえ、そこに気持ちがなくても。
 明日まで一緒にいるということは、そういう覚悟もしているつもりだ。
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