極上CEOの執愛に今にも陥落しそうです~私、振られたはずですよね?

 「香奈は中国茶も飲むのか?」
 「ウーロン茶やプーアル茶くらいですけど、器が素敵だなって思って。〝紫砂壺〟って、なんて読むのかな」


 最後はひとり言のようにボソッと言ったが、海里がすかさず拾う。


 「〝しさこ〟か〝ズシャフゥ〟かな。日本で言う急須。中国江蘇省(こうそしょう)宜興(ぎこう)の土で作られる、茶壷でも一番有名な陶器だ」
 「海里さん、詳しいんですね」
 「まあ、それなりにね。一応、アミュゼで世界各国の商品を取り扱っているわけだし」


 海里は控えめに言うが、多岐に渡る商品を網羅するなど簡単ではない。香奈がたまたま興味を示し、疑問を持ったことに対して即座に答えられるスマートさに改めて感心させられた。
 尊敬の念を持って香奈が見つめていると、海里と目が合う。微笑みを向けられ、香奈も同じように返した。


 「あっ、見てください、海里さん。これ、かわいい」


 陳列された急須の中からひとつを手に取る。赤をベースに花のような木の枝のようなモチーフがついていた。
< 197 / 292 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop