極上CEOの執愛に今にも陥落しそうです~私、振られたはずですよね?

 「これは一点ものだそうだ。中国でも有名な作家が作ったらしい」
 「世界にひとつだけ?」
 「みたいだな」


 海里と店員が揃って香奈を見つめる。

 (でも、きっと高いよね……)

 何気なく値札を見て、息が止まる思いがした。ドルマークで書かれた値段が、予想より一桁多いのだ。

 店員が香奈に向かってなにやら口走る。その様子からたぶん〝今回を逃したら一生手に入りません〟などと言っているのだろう。消費者の心をくすぐるセールストークだ。


 「気に入ったんだろう? 買おう」
 「待って、海里さん」


 香奈から商品を取り、素早く店員に渡す。


 「香奈はブランド品とかより、こういうほうが好きだろう」
 「でも――」
 「いいから。俺からの気持ちだ。茶葉と湯呑もセットで買おう」


 そこまで言ってくれているのに拒絶はできない。


 「ありがとうございます」
 「どういたしまして」
< 199 / 292 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop