極上CEOの執愛に今にも陥落しそうです~私、振られたはずですよね?
「これは一点ものだそうだ。中国でも有名な作家が作ったらしい」
「世界にひとつだけ?」
「みたいだな」
海里と店員が揃って香奈を見つめる。
(でも、きっと高いよね……)
何気なく値札を見て、息が止まる思いがした。ドルマークで書かれた値段が、予想より一桁多いのだ。
店員が香奈に向かってなにやら口走る。その様子からたぶん〝今回を逃したら一生手に入りません〟などと言っているのだろう。消費者の心をくすぐるセールストークだ。
「気に入ったんだろう? 買おう」
「待って、海里さん」
香奈から商品を取り、素早く店員に渡す。
「香奈はブランド品とかより、こういうほうが好きだろう」
「でも――」
「いいから。俺からの気持ちだ。茶葉と湯呑もセットで買おう」
そこまで言ってくれているのに拒絶はできない。
「ありがとうございます」
「どういたしまして」