極上CEOの執愛に今にも陥落しそうです~私、振られたはずですよね?
血色のいい唇を三日月の形にすると、頬骨がふっくらと浮き上がった。
色白で目がぱっちりしているせいか、香奈は子どもの頃、フランス人形のようだとたびたび言われた。それはかわいらしい顔立ちをしていたというよりはむしろ、母の趣味で着せられていたふりふりの洋服のせいだろう。いかにもお姫様みたいなドレスばかりだった。
二十七歳になるのに、邦夫にはそのときの印象が強いのだ。
「まもなく到着するぞ。ワクワクするなぁ」
邦夫はダークブラウンのスーツのジャケットを整え、お尻をもぞもぞと動かした。
六十歳を目前に控えているというのに、切れ長の目尻に皺を刻んで子どものように目を輝かせる。無邪気な表情は、大の大人にはとても見えない。
この頃白髪が目立つようになってきたものの、体のためにゴルフやジムで汗を流しているおかげか肌の張りや艶は四十代と言ってもいい。適度に日焼けしているため健康的にも見える。
「お父さん、はしゃぎ過ぎ」
「それはそうだろう。盛大なパーティーが開かれるんだから」