極上CEOの執愛に今にも陥落しそうです~私、振られたはずですよね?

 休憩を挟み、コーヒーショップをあとにする。


 「最後に香奈と行きたい店がある」


 そう言って香奈を連れていったのは、見たことのない綺麗な文字が飾られた店だった。


 「わぁ、かわいい。ここはなんのお店ですか?」
 「花文字といって、二千年の歴史を持つ中国の伝統芸術。花や龍といった縁起のいい植物や動物で装飾された文字なんだ」


 なんでも、気の流れによってさまざまな事象をとらえる風水術のひとつなのだとか。開運や福を招くと言われているらしい。


 「ふたりの名前を並べて描いてもらおう」
 「はい」


 幸せになれると言われ、元気よく頷いた。

 店主とのやり取りは海里に任せ、店内に飾られた文字を眺めて歩く。その中には香奈も知っている日本の芸能人の名前もあった。
 完成まで近くの店を見て時間を潰しているうちに太陽は沈み、香港島に夜が訪れる。ここへ来てまだ二十四時間も経過していないのに、内容は盛りだくさん。ふたりの距離も、心なしか近づいた気がしていた。
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