極上CEOの執愛に今にも陥落しそうです~私、振られたはずですよね?
自分の左手を眺め、香奈はかすかに頬を綻ばせた。その表情が幸せそうに見えたのは、海里の願望か。本当にそう感じてくれたらいいのにと思わずにはいられない。
「せっかくだから行きたいです。少し長めに休憩をもらったから、時間なら大丈夫なので」
「よし、決まりだ」
海里は香奈の頬にキスをし、意気揚々と車を発進させた。
コインパーキングに車を止め、香奈の手を取り助手席から降ろす。目的の店まで、そのまま手を繋いだ。
たった一泊とはいえ香港への小旅行は、ふたりの関係性を深める、いいきっかけになったと海里は感じている。自然と手を繋げるのも挨拶代わりにキスをできるのも、あの旅行があったからだろう。
今は香奈の心にべつの男がいるのかもしれないが、少しずつ好きになってもらえばいい。焦る必要はない。なにしろ香奈は正真正銘、海里の妻になったのだから。
手を握り返してくれる香奈がいれば、今はそれでいい。
「えっ、海里さん、ここ……」
店の入口に差しかかったところで、香奈が足を止める。