極上CEOの執愛に今にも陥落しそうです~私、振られたはずですよね?
海里の妻になったからには、彼女の左手の薬指をいつまでも空席にしておきたくない。
口に出しては言えない、無様な独占欲だ。
「じゃあ、お願いします」
「よし、行こう」
遠慮がちにしながらも笑顔を見せた香奈の手を引き、店内に入った。
黒を基調としたシックな内装は格式高い印象を与え、入店する者の背筋を伸ばさせる。洋服や靴、バッグや宝飾など数多く取り扱っているが、ごちゃごちゃした感じはなく、ゆったりと陳列され品の良さを物語っていた。
「海里様、いらっしゃいませ」
黒いスーツを着た女性店員が、すかさず近づき挨拶をする。
「社長もお見えになってます」
「父がここに?」
思わず聞き返した。香奈も隣で面食らう。
たしかに今日までに準備しておいてほしいと頼んではいたが、店で待ち受けているとは予想もしない。