極上CEOの執愛に今にも陥落しそうです~私、振られたはずですよね?
婚姻届を出して十日が経過した。
証人欄にサインはもらっていたが、香奈の両親にも改めて結婚の報告をし、ホッとひと息といったところである。
まだ着け慣れない結婚指輪は、海里の左薬指で目映い光を放っている。小さいくせに存在感は大きく、ふとしたときにしみじみと結婚の事実を海里に知らしめていた。
いよいよ明日は、香奈がここへ越してくる。
閑静な住宅街にある低層のマンションは、二年前に海里が開発した物件である。それ以前住んでいた――というよりは荷物を置いていたマンションは手狭になったため処分した。
広いルーフバルコニーを有し、各スペースもゆったりとした部屋は、香奈と新婚生活をはじめるにはもってこいだ。
帰宅して三十分ほど経った頃、インターフォンが鳴った。
飲みかけのビールをテーブルに置き、モニターを確認する。柚葉だった。
ここに引っ越したとき、彼女は海里の母親にくっついて一度だけ来たことがある。
「こんな時間にどうした」
『おじ様から結婚したって聞いたわ。お祝いを持ってきたの』
柚葉は手にした紙袋をモニターに映るように持ち上げた。形状からワインのように見える。