極上CEOの執愛に今にも陥落しそうです~私、振られたはずですよね?
香奈との新居となるここに、彼女が不在のときに招くわけにはいかない。かといって、持参したお祝いをコンシェルジュに預けるように頼むのは失礼だろう。相手は幼馴染だ。
「今、そこに向かうから」
『……部屋にあげてくれないの?』
「悪いな。香奈がいないから、それはできない」
柚葉の顔が曇ったのがモニター越しにでもわかった。
「いったん切るぞ」
『まっ』
なにか言おうと口を開いた柚葉を遮り、通話を切って階下へ向かう。セキュリティゲートを抜けると、彼女は手を上げて微笑んだ。
「遅い時間にごめんね。でも、できるだけ早くおめでとうって言いたくて」
「わざわざよかったのに」
「小さい頃から仲良くしてきた幼馴染でしょう? お祝いくらいさせて」
「そうだな。サンキュ」
幼馴染として、長年の友人として、心から祝福してくれていると思いたい。海里が香奈と結婚した以上、さすがに柚葉も、自分には見込みがないと割りきる以外にないだろう。