極上CEOの執愛に今にも陥落しそうです~私、振られたはずですよね?

 「これ、ビンテージもののワインなの。香奈ちゃんがいれば、三人で一緒に飲みたかったんだけど。……今度、お邪魔してもいい?」
 「そうだな、機会があれば」


 社交辞令が半分、本気が半分という、複雑な気持ちだった。
 男女である以上、これまでのように気安い間柄でいるわけにはいかない。柚葉側に好意があればなおさら。柚葉のためにもならない。

 かといって両親同士が仲良く、幼馴染という関係性上、きっぱりと絶縁するのは難しい。彼女から嫌がらせをされたわけではないため、一方的に突っぱねるのは利己的だ。
 柚葉とは、今後も一定の距離を保って接していくのがいいだろう。


 「送れないから、タクシーを呼ぶよ」
 「ちょっと待って」


 コンシェルジュのカウンターに向かおうとした海里を柚葉が引き留める。


 「トイレに行きたくなっちゃった」
 「トイレ?」
 「ごめんね。海里さんの部屋のトイレを借りられないかな」


 エントランスにコンシェルジュが使用するトイレはあるが、一般向けには開放されていない。
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