極上CEOの執愛に今にも陥落しそうです~私、振られたはずですよね?

 「トイレを借りるだけ。すぐに帰るから」


 柚葉は〝お願い〟と両手を胸の前で合わせた。
 生理現象を我慢しろというのも酷だろう。


 「わかった」


 迷った末に海里は柚葉を連れ、セキュリティゲートをくぐった。
 エレベーターに乗り、最上階である三階を目指す。玄関を開け、柚葉をトイレに案内した。

 プレゼントされたワインをダイニングテーブルに置く。彼女が出てくるのを気にしながら待っていると、ソファの上でスマートフォンがヴヴヴと振動音を響かせた。
 香奈かもしれないという予想が的中。画面に表示された名前を見て、無意識に顔が綻ぶ。


 「もしもし」


 スマートフォンを耳にあて、ソファに座った。


 『海里さん、まだお仕事中ですか?』
 「いや、もう家。どうかしたのか」


 まさか、引っ越しを延期したいと言うわけではあるまい。
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