極上CEOの執愛に今にも陥落しそうです~私、振られたはずですよね?
ハラハラしつつ、声は平静を装う。
『明日の引っ越しですが、海里さんはそこで待っててください』
「……ここで? 突然どうした」
明日、引っ越し業者が荷物を積み込んだあと、香奈は海里の車でここへ来ることになっているが。
ひとまず延期ではないのだとわかり、電話口の香奈に伝わらないよう細く深く息を吐く。
『私ならタクシーでも電車でも行けますから』
そのひと言で察する。海里の時間をなるべく拘束したくないと考えたのだろう。
香奈はそういう気遣いのできる女性だ。――だが。
「その必要はない。予定通り迎えにいくから」
それもこれも、早く香奈に会いたいがためである。少しの時間も無駄にしたくない。
『いいんですか?』
「そうさせてくれ。ふたりの結婚生活がスタートする大事な日だ」