極上CEOの執愛に今にも陥落しそうです~私、振られたはずですよね?
海里はスマートフォンを右手に持ち替え、左手に光る結婚指輪を眺める。香奈の唇にするつもりで、自分の薬指に口づけをした。
たかが指輪、されど指輪。不確かな愛を育もうとしている海里にとって、目に見えるふたりの繋がりはとても大きい。
『それじゃ、甘えちゃおうかな』
「ああ、そうしてくれ」
『はい、よろしくお願いします。明日、待ってますね』
いよいよ明日から、ここでふたりの生活がはじまる。
想像するだけで気持ちは高揚し、知らず知らず笑みが零れる。もしもミナトにでも見られたら、〝締まりのない顔だ〟と揶揄されるだろう。
『おやすみなさい』
「おやすみ」
幸せな気分で香奈との通話を切ったそのとき、背後を誰かが通った気配がした。
しかし反射的に振り返ってみても、誰もいない。気のせいかと思いなおした直後、柚葉の存在を思い出す。香奈と電話しているうちに、うっかり忘れていた。
玄関へ行くと、彼女はそこにいた。