極上CEOの執愛に今にも陥落しそうです~私、振られたはずですよね?
「悪い。電話が入った」
「ううん。……香奈ちゃんから?」
バッグを両手で持ち小首を傾げる柚葉に、海里は頷いて答える。
「この前の話だけど、香奈ちゃんには……」
柚葉の表情にかすかな緊張が走る。
香奈には忘れられない男がいるというやつだ。
「話してない」
柚葉にどんな意図があったにせよ、海里が香奈の古傷をえぐって傷つけるつもりはない。過去にどんな恋愛をしていようと、香奈は海里の妻になったのだから。
大事なのは今である。彼女の心を海里で満たせばいい。
「そう」
声のトーンが若干上がった。海里が約束を守り、ホッとしたのだろう。